佳き日に




[2]




グワン、と激しく揺さぶられている気がする。

先程から桔梗が乗っている車に政府の車が何度も体当たりをかましてきているからこんなに揺れているのだろう。
騒々しい物音と琴の焦る声はちゃんと耳に届いているはずなのに、桔梗の脳は上手くそれを処理出来ないでいた。

ガンッと上下に揺れ、桔梗は額をフロントガラスにぶつける。

痛い、という感覚さえも曖昧だ。

焦点の会わない視界の中で、琴が必死にハンドルを回しているのが見えた。

自分も何かしなければ、虚ろな頭でそう考えるも、手足が動かない。
というか、手足に神経が繋がっていない感じだ。

眠い。
いや、眠いというより、意識が遠のいていく。
抗いたくても、抗えない。

まぶたを強制的に閉じられる、そのとき耳元で琴が叫んだ。


「おい桔梗お前どうしたんだし!何寝てんだし!」


寝てないですよ、そう言おうと思ったのに口が動かせなかった。

今の桔梗には意識を保つだけで精一杯だ。




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