佳き日に
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人通りは少ないが、比較的広く、大型車が通りやすい道路。
そんな都合いい道路があるのか、と思ったが探せば普通にあった。
閏はサングラスをかけ道の端に座り、携帯をいじりながら人を待っているフリをする。
雪から頼まれたこととは言え、これからやることは得意分野じゃないんですよね、と閏は思う。
そうしている間にも、道路には路上駐車する車がドンドン増えていく。
車と人通りが少なくなったところを見計らって、閏は行動に出る。
狙うは、今車に乗り込もうとしている30代の女性だ。
サングラスを外し少しカチッとした歩き方で女性に近づく。
「すみません。」
明るい茶髪で、オシャレにも気をつかう女性なのだろう。
閏が声をかけた時は訝しげだったが、閏の顔を見た瞬間、その表情は和らぐ。
こんな時に、自分が女性受けする顔でよかった、と閏は思う。
イケメンという程整ってはいないが、誠実で謙虚な人に見えるようだ。
「恋人にしたいような人ではないけど、友達とか、相談相手にしたいタイプね。そーゆー顔してる。」
「大人っぽいってことですか?」
「違う。真面目そうってこと。」
ずいぶん前に椿と交わした会話だ。
琴がバリバリのヤンキータイプで、雪先輩は近付き難いクールなイケメンタイプ。
閏には言ってることがよく分からなかったが、椿が言うのだから多分そうなのだろう。
とりあえず、今まで生きてきた中で初対面にして嫌そうな顔をされたことはない。
純粋にそれはすごく助かる。
「何でしょうか?」
声をかけた女性はふわっと笑みをこぼして答えた。
閏はあらかじめ用意してあったものを鞄からそっと取り出す。
「あの、これから何か用事とかありますか?」
「用事ですか?特にないですよ。」
「じゃあ、これを。」
そう言って閏は一枚のチケットを取り出す。