佳き日に
[4]
雨の瞳は茶色だった。
ビー玉みたいで、澄んでいて。
顔が整っていたせいか、人間というよりは人形のように見えた。
今でもよく覚えている。
もう忘れてもいいはずなのに。
平日の昼。
リビングで微睡むエナカの表情は冴えない。
まだ、雨のことは整理がついていないのだろうか。
分からない。
「雨って仕事してるの?」
一週間。
初めて会った日からほぼ毎日店に来てエナカとおしゃべりする雨に、気になってそんな質問をした。
見た所大学生というわけでもなさそうだが、仕事をしているのだったらこんなに頻繁にはエナカの元へ訪れないだろう。
さすがに毎日おしゃべりしていたわけではなく、ただ本を読んでいたときもあったが。
雨と一緒に過ごす時間が不快だったわけではない。
寧ろ、その時間を気に入っていた。
理由は分からないが、雨と一緒にいるととても落ち着いた。
「ちゃんとしてるよ。」
雨の答えが意外で、思わず彼の方を見た。
雨は本から目を離さず、いつも通りなにか淡々としていた。
「どんな仕事?」
「頼まれたことをやる仕事。」
「何でも屋っていうやつ?」
「うん。そんな感じ。」
そんな、昔の会話を思い出していたら、家の外から音楽が聞こえた。
お昼の音楽だ。
エナカは重い体を起こす。
様々なものが散乱している床。
「買い物、行かなきゃ。」
エコバックを掴み、エナカはスーパーへ向かった。