佳き日に
[3]
今日、メモリーズの業界での慌ただしさは菘が今まで経験したことがないくらいにすごかった。
椿の店ではひっきりなしに電話が鳴り響き、今まで五十人近くの客が来た。
商売上がったりだ。
武器の流通もかなり盛んになったらしい。
それだけあの三人はメモリーズの業界では大きな存在だったのだろう。
菘も恐怖を感じなかった訳ではない。
あの三人のうち誰か一人とだけ戦ったとしても、菘が生き残れる可能性はかなり低いだろう。
そんな簡単に死ぬつもりはないが。
技術や能力で劣るなら数で戦う。
そう意気込んで仲間を集め始めた菘だった。
しかし。
「・・・梔子につながらない。」
協力を頼んだメモリーズの一人、梔子と連絡がつかないのだ。
携帯片手に椿の店の大きなソファに座っている菘。
その顔からイライラしていることが容易に分かる。
「あぁ、了解分かった。明日には知らせておくよ。」
机を挟んだ向かいの椿は通話を終えたようだ。
一日中忙しかったからか、その顔からは疲れが窺える。
不機嫌を隠そうともせず菘は椿に話しかける。
「椿は雪の言っていたことを信じるの?」
「半分半分だね。警戒しておくに越したことはないけど。」
赤い女の後継人、柳琥珀が本当の黒幕。
雪、閏、琴は赤い女側の囮で、警察に加担しているわけではない。
今最も業界を騒がせているこの情報。
真偽は定かではないが、菘はこの情報は嘘だと思っている。
あの三人にかかれば赤い女だってさすがに敵わないのではないか。
菘の頭にはその考えがずっとこびりついている。
そのくらい、あの三人は他のメモリーズと比べて特別だ。
異質。
何故そう感じるのかは分からないが、菘にとってあの三人はそんな存在だ。