佳き日に
「ねー椿。梔子が電話に出ない。」
メールで協力呼びかけたのに・・・と菘がふて腐れた表情だ。
少し唇をつきだし携帯を凝視している。
「あー、梔子ね・・・」
椿は浮かない顔で呟く。
菘はその一瞬の表情を見逃さなかった。
「椿何か知ってるの!?」
キッと射抜くような視線を向ければ、椿は苦笑いを返してきた。
「いや、確証がないから・・・」
「いいから言って!!」
身を乗り出した反動で眼鏡がずれ落ちそうになり慌てて菘はそれを押さえる。
目も悪くないしメモリーズにとっては邪魔でしかない眼鏡を菘はいつもつけている。
安全のためだ。
眼鏡をかけていれば警察からメモリーズだとは疑われにくい。
菘はまさに石橋を叩いて渡るタイプだ。
椿がゆっくりと口を開く。
「梔子は一人で福島に行ったんじゃないかと思ってね。」
「なんで?」
「なんでって、そりゃあ梔子の両親が赤い女に殺されたから。」
「あぁ、そっか。」
メモリーズは仕事が仕事なだけに殺し殺されたが日常茶飯事だ。
それゆえに親を殺され一人になってしまう子どもも多い。
菘や鉛丹、桔梗もそうだ。
そして子どもが親の敵討ちをするというのも珍しくない話しだ。