イジワル社長と秘密の結婚
蒼真さんはそう言うと、部屋を出て行った。私は数秒遅れて戻ったけれど、彼のポジティブ過ぎる考えには戸惑ってしまう。

夫婦でいる間は楽しもうとか、なにがプラスになるか分からないとか。さすが、若くして社長になっただけあって、思考が私とは全然違う。

結局その日一日、頭がボーッとしたまま、業務をこなした。

「はぁ……」

すっかり遅くなり、気づけば社内には、私と迫田課長だけになっている。

思わずため息をついたところへ、課長が優しく微笑みながら声をかけてきた。

「どうした? あのあと、社長になにか言われたのか?」

本当、この笑顔に癒される。課長なら、きっとあんな強引に、キスをしたりはしないんだろうな。

「頑張ってと、言われただけです」

本当のことは言えないし、課長を心配させたくない。当たり障りのない内容を言うと、課長は小さく頷いた。

「プレッシャーになったかな? まあ、社長は仕事には厳しい人だけど、社員思いの方だから、気負わずやればいい」

「社員思いですか? かなり、実力社会な印象ですけど……」

そういう環境を作ったのは、蒼真さんだと認識されているけど……。

「組織だからな。ただ、決して社員を、駒のように使う方じゃない」

「そうですか……」

なんだか素直に聞けないけど、迫田課長が言うのだから、そういう一面もあるんだろう。

「そうだ、伊原。景気付けに、これからメシでも食いに行かないか?」




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