『短編』紙婚式
トイレでひとしきり泣いたあと、真っ赤になっているだろう目を隠すように、うつむいたまま食卓に戻った。
黙々と無言のまま食べ続けているわたしに、亮は何も話しかけてこなかった。
わたしはさっさと食器を片づけ、お風呂に入り、早々にベッドに潜り込んだ。
これはきっと、悪い夢。
明日目覚めれば、いつもの朝が来てくれる。
必ず来てくれる。
布団の中で丸くなりながら、そんなことを期待してしまっていた。
しばらくすると、寝室の扉が開いた。
思わず体に力が入る。
「菜々。もう寝た?」
いつもと変わらない亮の声が降ってくる。
わたしは眠っているふりをした。
亮はわたしの隣りに入ってきて、後ろからそっと抱きしめた。