オオカミ先輩の猫かぶり
先輩と肩を並べて歩く帰り道。



12月になるともう外は5時でも真っ暗だ。



「よく私のクラスまで知ってましたね。」



さっき、鞄を取りに行くとき、私の前を歩いていた先輩は、私の教室までなんの迷いもなしに到着したのだった。



「んー?気になる子のクラスは普通知ってるでしょ。」



「へー。」



「あ、なにその怪しんでる顔。」



「いや、その気になる子って何なんですか?」



普通に考えれば、好きな子って意味だろうし、付き合ってとか言われたからそうなんだろうけど。



だけど、やっぱり信じられないでしょ。



大神先輩みたいな人が私なんかを好きなんて。



「好きだよ。」



「へ?」



真剣な顔をして、見つめてくる先輩に動揺が隠せない私。



「これでも信じてくれない?」



悲しそうに揺らぐ瞳を見て、気づかされた。



私、本当に最低だ。



先輩の言ってること、全部嘘だって決めつけて。



先輩は本気で真剣にぶつかってきてくれていたのに。



自分が傷つかないように、逃げてたんだ。



「先輩。今の私の気持ち、聞いてくれませんか?」



私の思っていること、すべて伝えよう。



それが、先輩に対する誠意の見せ方だ。



「うん。聞かせて。そこの公園に入ろうか。」



先輩はちょっとだけ、さみしそうに笑った。
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