Nine
「泣いているのかい?」
可愛いねぇ、とバカにするような口調で彼は笑う。
私は口の中で「誰か助けて」を何度もリピート。
ただ、それだけで効果がないのは分かってる。
でも、もしかしたら
そういう力を持った人が
私の叫びを聞き取って
駆けつけてくれるかもしれない。
そう。昨日テレビでやっていた
人の心を読む超能力者。
あんな感じの人が…
もちろん来るはずもなく。
私はあっという間に茂みへと連れられ、木の幹に身体を押し付けられた。
「大人しくしてれば良いんだよ、君は」
肩を掴む力が、普通じゃないくらい強い。
私は恐怖で既に声すら出なくて。
彼の手が制服の上を動く
感触に、ただ目をつぶって
耐えるしかなかった。