愛は満ちる月のように

(7)偽りの真実

「小岩! いったいどうなってるんだ? 彼女はどういう女性なんだよ……もう、訳がわからない」
 

初体験から一ヶ月が過ぎた。

夏休みの間、色んな場所で沙紀を見かけた。男同士で出かけたときも、大学付近でも、そして彼女とデートのときにも。新学期は始まってからは毎日大学に姿を見せるようになった。

最初は偶然だと信じていた。いや、思い込もうとしていたのだ。だが、しだいに話しかけてくるようになり……。

これはもう、何かの意図があるとしか思えない。


『あの、申し訳ありませんが、もう来ないでもらえませんか? 彼女も妙に思ってて……僕の事情は以前お話したとおりですから』


少し卑怯な気はしたが、弱気に出ては負けだと思い、悠は正面からそう伝えた。

すると、『ええ、そうだったわね』そんなふうに答えて、ここ二日ほど沙紀の姿は見なかった。


「それでわかってくれたのかと思ったら……。彼女、マホさんの大学まで会いに行ったんだ!」


沙紀は彼女に“ふたりの関係”を告げたという。

悠は問い質され、嘘がつけず正直に白状した。

しかし、当たり前だが『童貞が恥ずかしくて』などといった言い訳を彼女が許してくれるはずもなく。浮気は浮気だ、と責められ……。


交際を白紙に戻したい――そんなメールが一通届き、悠の初恋はあっけなく終わった。


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