愛は満ちる月のように
いつも怯えていた気がする。

美月の瞳に浮かぶ、尊敬のまなざし、それが軽蔑に変わる瞬間を想像して。

十一年前、母が露わにした悠への拒絶。その記憶は、彼からあらゆる勇気を奪い取った。


「それは……真実とやらを聞いてみないことにはわからないわね」


弱気を見せる悠に美月は容赦ない。


「でも、ひとつだけ確認させてちょうだい。遠藤沙紀さんは本当にあなたのお姉さんなの?」

「――法的に言えば、違う」

「お父様はなんて?」

「絶対に違う、と。父の言葉を信じるなら、違うだろう」


悠の言葉に美月は安堵の息を吐く。

やはり、倫理的な問題から、そこが一番気になっていたらしい。


「そう。でもあなたは、お父様の言葉が信じられないのね」


そんなことはない、と言えず……悠は美月から目を逸らした。

 
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