愛は満ちる月のように
未成年者には後見人が付けられる。

当然、父親が親権者として後見するわけだが……。しかし、財産の質と量を鑑みて、管理権を持つ後見人を桐生家から立てることになった。そして後見人を監督する人間として、双方の血縁者が相手の監督人と決まる。

その桐生家を代表して管理権のみを有する未成年後見人となったのが、遠縁にあたる桐生善朗(きりゅうよしろう)。

――そしてこの男が騒動の発端となる。


美月の父親、藤原太一郎(ふじわらたいちろう)は中堅企業の重役をしていた。

父親が再婚したため、美月には継母と九歳違いの異母弟がいたが、悠の覚えている限りではごく普通の家族にしか見えなかった。

ただひとつ、あまり普通でないことは……美月の父親は国内最大のコンツェルンと言われる藤原グループ本家の人間という点か。グループの総帥は美月にとって従兄叔父にあたる人物なのだ。

それが、彼女の相続に深く関わってくる。

もし、藤原が桐生の“力”をすべて手に入れたら、経済界は著しく不均衡な事態となる。それは誰にとっても好ましい事態ではない。

あえて言うなら、ある程度の力を持つ一条グループの後継者となった悠の立場でも同じこと。

そんな中、桐生善朗はひとつの提案をした。


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