愛は満ちる月のように
(6)十五夜の告白―1
那智の部屋は床がタイル張りになっていた。
三階のリビングとキッチンは靴を履いたまま、四階に上がるところで脱ぐ。かなり古いビルなのですきま風を感じる。だが、ソファやテーブル、リビングボード、壁にかけられた時計など、使い込まれた家具や備品が並んだ趣のある部屋だった。
悠の部屋は新しくて綺麗だがまるでモデルルームのような、無機的なイメージだ。
今の悠にはよく似合うが、昔の悠とはどこかずれて思える。
無言の時間が流れ、思い切って口を開いたのは美月だった。
「――ごめんなさい。危険を顧みずに助けてくださったのに。お礼もちゃんと言えなくて……あの、ありがとう……」
美月の謝罪に悠は顔を上げ、困ったように笑う。
「ああ……那智さんが余計なことを言うから……」
「いいえ、最初にお礼を言うべきだったわ」
「気にしなくていいよ。君の言うとおりだ。――後くされのない女性と気楽な付き合いを楽しむ。真摯な恋愛を望む女性には絶対に近づかず、誰も傷つけない。そう思ってきたのに……結局、沙紀の手の上にいたんだな……」
悠はソファに腰を下ろし、深いため息を吐きながら天井を仰ぐ。
三階のリビングとキッチンは靴を履いたまま、四階に上がるところで脱ぐ。かなり古いビルなのですきま風を感じる。だが、ソファやテーブル、リビングボード、壁にかけられた時計など、使い込まれた家具や備品が並んだ趣のある部屋だった。
悠の部屋は新しくて綺麗だがまるでモデルルームのような、無機的なイメージだ。
今の悠にはよく似合うが、昔の悠とはどこかずれて思える。
無言の時間が流れ、思い切って口を開いたのは美月だった。
「――ごめんなさい。危険を顧みずに助けてくださったのに。お礼もちゃんと言えなくて……あの、ありがとう……」
美月の謝罪に悠は顔を上げ、困ったように笑う。
「ああ……那智さんが余計なことを言うから……」
「いいえ、最初にお礼を言うべきだったわ」
「気にしなくていいよ。君の言うとおりだ。――後くされのない女性と気楽な付き合いを楽しむ。真摯な恋愛を望む女性には絶対に近づかず、誰も傷つけない。そう思ってきたのに……結局、沙紀の手の上にいたんだな……」
悠はソファに腰を下ろし、深いため息を吐きながら天井を仰ぐ。