愛は満ちる月のように
父の言葉に内心ドキッとしながら、美月は小さく笑った。


「ごめんなさい、心配ばかりかけて……しかも出戻りだし」

「バカ言うな。父さんはおまえを嫁にやったつもりは一度もない!」


母も隣から、


「離れていた八年分をこれから取り戻さないとね。よかった……もう一度、こんな日がきて……」


笑いながらポロポロ涙を零す。
 

父は怪我の後遺症かかなり痩せた。母も年齢以上に老けて見えるのは、気のせいではないだろう。

決して美月の悪意や不注意で起こした事件ではないけれど、自分が原因でこんなにも苦労をかけたことは事実だ。

両親の傍にいて、少しでも親孝行したいが……。

美月が長く日本にいることで、桐生の生き残りが動き出さないとも限らない。


美月は緩みそうになる涙腺を必死で引き絞った。


(泣いたらダメよ。泣いて甘えたりしたら、ユウさんと何かあったって思われる。これ以上、どんな気苦労もかける訳にはいかないんだから)


「コーヒーでも飲んでて。私は化粧室にいってくるわね」

「ひとりで大丈夫か? 母さんについて行ってもらうか?」


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