愛は満ちる月のように
悠が沙紀を怒鳴りつけようとしたとき、


「それは同意だな。父さんもあの男は気に入らなかった。どれだけ大きな自動車会社の御曹司かしらんが……桜にはもっと似合いの男がいるはずだ」


父はベッドの上に座ったまま、憮然とした表情でうなずいていた。

桜も拍子抜けしたのか、


「そ、そんなこと……。だから、あんな男はどうでもいいの。私が怒ってるのは……」


言い辛そうだが、どうやら桜の怒りは悠との一件が原因らしい。


「君もそうだ……沙紀。馬鹿な真似をして、これ以上人生を無駄に過ごすものじゃない」


父の視線は桜から沙紀に移る。


「何よ、それ? 父親気取りでお説教? そんなことは……」

「ああ、その件だが……夏海とも相談したんだが、DNA鑑定を受けようと思う」


その言葉に全員が息を呑んだ。


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