クロス†ハーツ


「委員長は隣のクラスの水瀬薫だよ?誰か水瀬狙いとかでやらない訳?」


小夜のイライラが募っていくのが、すごく分かる。
あの子はどちらかと言えば、短気だから。頭良いのに。

このクラスは平和だ。
何ヶ月か過ごしたけど、特別目立つような子もいなければ、引っ込んでるような子もいない。
だから、誰も立候補しないんだと思う。


「うーん、どうしようかね…」


クラスはさらにざわついた。




こんな光景はめったにない、と思う。
風紀委員に入れば、人気者になれるし、注目されるのが苦にならない人には、良いことづくしだと思う。

大概、クラスに一人はいるミーハーだったり目立ちたがりだったりする子が立候補するもんなんだけど。
………うちのクラスはいない。




バンッ

軽く教卓を叩く音が聞こえた。
みんなの視線が自然に小夜の方に向く。


「もう面倒くさい。凛、あんたやりなよ」

「………は、い?」


いきなり自分の名前が出てきて、私は間抜けな声を出してしまった。

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