クロス†ハーツ
「え…、なんで、私?」
「だって誰も出ないし、親友のよしみもあるし、それに凛だったらあのアイドルもどきの風紀でも浮かないかなーって」
「浮くでしょ!?」
私は、我を忘れて叫んでしまった。
風紀委員なんて絶対嫌だ。
あんな注目もされたくない。
小夜も負けじと、私をなだめる。
「でもまだ候補よ?あの委員長に選ばれなきゃいいんだから!」
「でも私、あの委員長別に好きじゃないし!風紀委員に入って注目されたいとも思わないし!」
「そんなの委員にならなきゃいいのよ!ね、みんな?」
小夜がそうクラスの人に促すと、思いもよらない声があがってきた。
「そうだよ、凛ちゃん。やってみなよ!」
「凛ちゃんなら浮かないよ!」
「え、そんな…、」
小夜だけじゃなく周りの人達までが、私の敵になる。
私はどうしようもなくてオロオロするばかり。
「ほら、ね。とりあえず名前だけでも、ね?」
「……名前、だけ?」
「そうそう。実際委員になれる人なんか一握りなんだから」
「そっか…、うん、分かった」
名前だけなら、と言って私は風紀委員候補になってしまった。
小夜は一仕事終えた感じで笑っていた。
私が取り乱して叫んだ声を、
隣のクラスで水瀬薫が聞いていたとも知らずに…。