クロス†ハーツ



…慣れてるんだな。


そんなことを思った。

私と違って、水瀬は高等部入った時から風紀にいるし、その容姿だから注目されることも多かったんだろう。
私とは大違いだな。


手を振りながら、そしてできるだけ笑顔を作りながら、そう思ってる自分がなんだかおかしかった。




すると、知らない間に司会の男の子が、水瀬の隣にいて、何か話しだした。


『えー、今日は本来出演予定でした副会長の桜沢早菜さんが体調不良のため、急遽雨宮さんが出演されたんですよね?』

「はい。彼女は、昨日も体調不良だったらしいのですが、僕たちに内緒で仕事をしてくれました。今日はゆっくり休んで、一日も早い復帰を委員一同願っています」


司会の質問にスラスラと答える。
私はさらに気が滅入る気がした。

ため息をつこうとした時、司会の子が私たちの後ろを回って私の隣に来る。


『雨宮さん。いきなりの代役で、緊張なさってるんじゃないですか?』

「え、あ…」


不意打ちの質問に、私の頭は真っ白になった。

ステージの上に立つだけで顔が引きつるのに、質問なんかに答えられるか!
という、思いが頭の中で交錯している。


「えっと、…緊張してます!」


やっとの思いで、出てきた言葉は、なぜか観客の笑いをとってしまったようで、会場に笑い声が溢れた。

司会の子も、笑っている。


『緊張の中、もう一つ質問です!』

「は、はい!」


司会の子の言葉にそう返事をすると、また笑いが起こる。
そのおかげで、私の緊張はだいぶほぐれた。

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