クロス†ハーツ
すると、水瀬は私の肩に手を置いて。
「え、何――」
「いいよ。話題は僕が引き戻す」
「え?」
肩に置いた手が下に滑ったと思ったら、水瀬は体を屈め、私の膝の後ろに腕を通す。
「へ、ひゃぁ…!?」
「司会さん、うちの会計さん、いじめるのはやめてくださいよ?」
気付いた時には、私の視界はひっくり返っていて。
会場が一気に騒がしくなったのも、なんとなく感じた。
「さ、高等部の生徒会の方が待ってるんですから、そちらを呼んであげては?」
『え、あ、はい…!それでは――』
いわゆるお姫様だっこをされている私の真横で、にっこり笑顔を作った水瀬が、司会の男の子に向かって言う。
それを聞いた司会の子は、我に返ったように会長達の紹介を始めた。
でも、私の頭はそれどころじゃなくて。
「ちょ、水瀬…!?降ろして…!」
「嫌がんなって。全校生徒の前なんだから」
「だ、だからって何でお姫様だっこなんてされなきゃいけないの…!」
「目立つだろ?」
至近距離で話していることにも耐えられなくなってきていた私は、そんなことを笑顔で言う水瀬に勝てるはずもなく。
「…ばか委員長」
「は、雨宮お前、いじめられたいわけ?」
「な…!」
そんな感じで舞台上では、観客に聞こえない程度の声量で、私と水瀬の言い合いが続いた。