女王様のため息


三人で交わし合う安堵の視線を傍らで感じていた私は、その繋がりを羨ましく思った。

大学時代からの付き合いで、誰もが経験するわけではない切ない思いを共有してきた三人には、私の存在が介入する余地なんてない。

生きる事が苦しくなるほどの悲しみを抱えてきた美香さんを支えてきた司と春岡さん。

この先何があっても途切れる事がない絆が見えるし、途切れて欲しくないとも思う。

学生時代の友達は、一生付き合える友達。

損得を考えずに、お互いの幸せに心を寄り添わせる事ができる関係を築く事は、社会人になってからは難しいのかもしれない。

男性なら、出世も絡むし更に難しそうだ。

信号が青に変わって、アクセルを踏み込んだ司の表情が、これまでになく深い穏やかさに溢れていて満足げに見えるのは、そんな大切な友達の未来が明るいものになると確認できたせいかもしれない。

きっと、溢れる嬉しさで胸はいっぱいのはずだ。

ずっと心を砕いて心配していた美香さんが、ようやく本当の幸せを見つける事ができて、知り合ったばかりの私でさえ嬉しいんだから、司のそれは、計り知れない。

「でも、ちょっと悔しいかも」

くすっと小さく笑いながら、思わず口に出た言葉。

私が入り込めない世界を持っている司の事、それは当然だと思うけれど、やっぱり少しだけ、寂しい。

「え?悔しい?」

私の言葉に気づいた司。

「ううん、何でもない。みんなが幸せになれて、良かったなあって。そう思っただけ」

慌てて言い直した私に、視線は前方に向けて運転したままの司は、ふっと笑みを浮かべた。

そして、意地悪そうな声で。

「俺が、真珠と海くんの関係に気持ちが落ち着かなかったのも、ちょっとはわかっただろ?今真珠が感じてる悔しさを、俺は何度も味わったんだ。
せいぜい悔しがって、我慢してろ」

……は?





< 172 / 354 >

この作品をシェア

pagetop