女王様のため息
確かに、高校時代の私と海は、周りにいた友達がこぞって『恋人に近い二人』だと冷やかすほどの親しい関係だったし、私達にもその流れにのってつきあいを始めてもいいかと思う感情もあった。
でも、そうはならなかったのは。
「将来背負うかもしれない面倒くささを受け入れてまで付き合うほどに、お互い好きじゃなかったから。
だから、海とはこれまでも、これからも、どうなるわけではないから」
「ん」
左折するためにハンドルをきる司の視線が、私の方に向いた。
相変わらず運転に集中していて、私を見てくれないけれど、ほんの少しだけ私に向けられた表情が安心感で満たされているようで、私の気持ちをわかってくれているんだと、思えた。
だからなのか、勇気が出た私は、更に言葉を続けた。
「海とは、面倒な未来を選べなかったけど。
司とは、どんなに面倒でやっかいで、手に負えない未来が待っているとしても、側にいたかったし、恋人になりたかったから。
だから。
諦められなかった」
まるでこの場には二人しかいないような空気感の中で、私の胸は浮ついていて、零す言葉がどれだけ甘いのかをすっかり失念していた。