女王様のため息


その日の晩、楽しいお酒に酔った父さんは、畳の上に体を投げ出して眠ってしまった。

ザルで有名な父さんがこんなになるまで飲むなんてこと、私の記憶にはなくて、その寝顔の優しさと共に驚いた。

何度起こしても目を覚まさない父さんに、薄手の毛布をかけて部屋の電気を消した。

「ごめんね、疲れちゃったでしょう?あの人本当に嬉しかったみたいで、付き合わせて申し訳なかったわね」

「いえ、お父さんとちゃんと向き合って色々と話せて良かったです。
真珠……さんとの結婚を喜んでくれて安心しました」

和室からリビングに移動して、母さんと私達でコーヒーを飲みながら。

どの顔にも穏やかで、そして嬉しさが浮かんでいた。

特に、父さんにずっと拘束されていた司には安堵感しか感じられない。

私との結婚を、何の問題もなく進められるように頑張ってくれた司のこと、改めて大切で愛しいと思った。

父さんの事だから、司が困るような話や結婚に対して後ろ向きな態度は見せなかったと思うけれど、それでもやっぱり、初めて会った『恋人の両親』という特別な相手には、司も緊張感が抜けなかったはず。

無意識だろうけれど、時々肩をほぐすように動かす仕草には疲れたという意味合いも見て取れる。

「司、お疲れ様。ありがとうね」

隣に並んで、小さくそう言うと

「んー、確かに緊張もしたし疲れてるけど、心地よい疲労感だな。
一仕事やり終えた感じ」

すっきりした顔を向けてくれる司に、私の気持ちはぎゅっと惹きつけられて目が離せない。

「真珠のお父さん、本当に真珠が可愛くて仕方がないって言ってた。
お酒の勢いもあったと思うけど、真珠とお兄さんがが幸せになる未来を作るためだけに生きてきたって。……照れずにそう言えるお父さんがすごく格好良く見えた」

「私と兄さんが幸せになる未来?」

「そう、親は子供よりも早く死んでしまうから、お父さんとお母さんがいなくなっても地に足をつけてちゃんと幸せになれる未来をつかめるように、それをサポートするためだけに生きてきたんだって。
……すごく、素敵だよな」

思い返すように、ゆっくりと呟く司は、小さく息を吐いた。

「俺は、まだまだ真珠を右往左往させて、勢いだけで気持ちをぶつけてるところも多いから、真珠のお父さんの事、ある意味まぶしいよ」

かなり、父さんの事が好きになったみたいだな。
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