女王様のため息
父さんも母さんも、私と兄さんに際限のない愛情を与えてくれた。
親の子に対する愛情は無償のもので、揺るぎなきものだというけれど、それは違う。
たとえ自分の子供を持ったとしても、親によっては子供に愛情を持てないまま、子供の存在をもてあまして。
その結果、親からの得られるべき愛情を得られないまま寂しい人生を送っている人も多いと感じる。
子供に衣・食・住を満たしてあげる事だけが愛情ではないという事を、ちゃんとわかっていて、子供の人生がよりよく進むように指針を出し、喜怒哀楽全てに愛情を込めて。
時には自分の為に使える時間を子供に捧げる事ができるような両親。
私も兄さんも、両親からのまっとうな愛情だけは潤沢に与えられて大きくなった。
そして、他人を愛して愛される大人になる事ができた。
確かに、親からの愛情が乏しかったり、あらゆる事情で全く愛情を貰えないまま成長した人だって、人間として素晴らしい人は大勢いる。
私の周りにだって、思い浮かべられるだけでも複数いるし、結局は自分次第で未来はどうにでもできると思うけれど。
自分の両親が私に与えてくれた愛情の重さと価値を知っているから、両親を大切にしようと思えるのも確かだ。
「真珠がこれから幸せな未来を築いていけるのなら、私と父さんの子育ても成功だったのよね。
学生時代はあんなに怒ってうるさく言ってたから、自分でも反省する事も多かったけど。
でも、こうしてあなたが選んだ人生を報告してもらえて救われたわね。
司くんに、存分に幸せにしてもらいなさい」
相変わらず眠り続けている父さんの背中を見ながら、心からの安堵のため息と共に母さんは私に呟いた。
「母さん……」
何だか胸がいっぱいになって、ほんの少し涙声。
母さんのそんな想いは、私にはとっくにわかっているものだったけれど、改めて念押しするように告げられると、感情の波が大きくなってくる。
言葉を失った私に、母さんはくすりと笑って。
「あーあ、今からそんなに湿っぽくなってどうするのよ。
感動の涙は披露宴の時までとっておきなさい。
号泣しながら『両親への手紙』を読んでもらうのが私の夢なんだから」
私の頭を優しく撫でてくれた。
小さな頃から慣れているその体温に、久々触れる事ができて更に感情は大きく大きく揺れる。
「母さん………」
きゅっと唇をかみしめて、その感情が溢れるのを我慢した。
溢れさせるのは、母さんの望み通り、披露宴の時までとっておこうと。
一生懸命堪えた。