女王様のため息


その日、眠り続けていた父さんの側に座って、小さな声で

『父さん今日はありがとう』

と囁いて実家をあとにした。

私と司の結婚を反対されるとは思っていなかったけれど、あんなにもろ手を挙げて賛成してもらえるとは思っていなかったから、少し驚いた。

母さんが直球で海の事を持ち出してきた事にも、やっぱり驚いたし、少しごめんねっていう気持ち。

父さんと母さんが海の事を好きだと言うのはわかっていたから、もしも海と結婚するとなったらかなりの喜びようだったと思う。

でも、私には司しか考えられないから、ごめんなさいだ……。

けれど、私が幸せになるだろうことは、二人にはわかってもらえたみたいで、思っていた以上にほっとした。




「いいご両親だな」

私の部屋に向かう車内で、ふと司が呟いた。

その顔には、どこかほっとしている安堵感と、これまでになく嬉しそうな感情が見える。

その嬉しさの理由は、もちろん私との未来を手繰り寄せたことによるものに違いない。

私も今同じ気持ちに満ちているからわかる。

大切な人との未来を、大切な人から後押しされることが、ここまで人の気持ちを安らかなものにするとは思ってもみなかったし、男の人の表情を、ここまで愛しく思わせるものに変えるなんて。

湧き上がってくる幸福感に車内は包まれて、言葉のやり取りはなくても、私と司との間には分かり合えるものが流れていて。

どうしても緩む顔を持て余しながらも、そんな自分が嬉しくて。

運転中の司の横顔を何度も何度もチラリと見た。
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