女王様のため息
もしかしたら、司ってお金持ちの家に生まれたお坊ちゃん?
セレブの一員なの?
料亭なんて、お金をいくら持っていけばおいしくごちそうを味わう事ができるのかも、何を着ていけばいいのかもわからないんだけど。
敷居が高い名門の家に嫁ぐ事になるんだろうかと、さっき青ざめた顔が、更に深い青に変化したような気がする。
「言っておいてよねー。私にも覚悟がいるんだから、細かい情報ちょうだい。
初対面の印象って大事だし、料亭の女将さん相手に適当な手土産なんて用意できないしって、そうだ、手土産、どうしよう」
そうだ、手土産、絶対に必要。
気付いた瞬間、うなだれてしまう。
ただでさえ、こんな夜遅くに営業しているお店なんてないのに、料亭をしているご両親なら舌も肥えてるだろうし、適当なものを持っていくわけにもいかないし。
「うっうー。手土産もどうしようだし、何を着ていけばいいんだろ。
やっぱりスーツだよね。それともおとなしめのワンピースとか?
料亭なら和装じゃないとだめだとか?ねえ、どうしよう。
失敗できないし、私どうしたらいい?」
気付けば涙声。両手を目の前で合せて司に視線を向けた。
司は、ハンドルの上に両手を乗せ、そこに顔を置いて笑っていた。
「な、なんでそんなお気楽に笑ってるのよ」
焦る私を見ながら笑ってる司を見て、ちょっとむかついた。
私一人が右往左往して、明日の事に悩んでるなんて。
「私だけじゃなくて、司にも関係あるのに。司と結婚するために私がこうして色々と悩んでるっていうのにどうしてそう落ち着いてるのよ。
少しは一緒に悩んでくれてもいいじゃない」
低い声で、拗ねている気持ちをあからさまに見せながら睨んでみるけれど、相変わらず軽い笑いを顔に浮かべている司。
「……本当に結婚する気あるの?」
私が、低い声でつめよってしまったのも仕方ないと思う。