女王様のため息


私の焦る様子が、そんなに楽しいんだろうか?

大きくため息をついて口を尖らせる私にも動じる事のない司は。

「結婚する気ありあり。こんなにかわいい女、手放すわけないだろ」

司はハンドルに預けていた体を起こして、その手を伸ばして。

ゆっくりとその顔を私に近づけると。

「俺と結婚したくてこんなに慌てる真珠を見せられて、ようやく俺だけが結婚を望んでる訳じゃないってわかったんだ。ほっとして、笑うくらい勘弁しろよ」

額と額をくっつけられて、あまりにも近い司の瞳。

これまでで一番私を優しく愛しげに見つめてくれる。

「司……」

「手土産も服も、二の次だ。俺との結婚を望んでる真珠が俺の隣にいる。
それだけで、いい。俺には、真珠が俺を愛してくれればそれでいい」

呟く吐息と共に感じるのは唇の熱。

かすめるだけの軽いキスだけど、背中に回された司の手の温かさとの相乗効果で私の体にはびくびくっと何かが走ったような気がする。

「ようやく、やっと、真珠の気持ちも何もかもを俺のもんにした。
天下を取った気分だな」

満足げな司の言葉が私の胸に響いて、身動きが取れない。

私の頬を這う司の指先からも、細めた目の奥からも、疑う事のない私への愛情が注がれて、車内には私の心臓の音だけしか聞こえない。

何か、言葉で答えたいけれど、気持ちが溢れてうまく口が動かせなくて。

ゆっくり、ゆっくりと、司に体を預けて、その背中に腕を回した。

私と同じくらいに早い司の鼓動から幸せをもらって、ぐっと目を閉じた。

「私も……」

溢れるたくさんの気持ちをうまく言えないまま、ただ一言それだけを呟いた途端、強い力で抱きしめられた。

『私も、司が私を愛してくれればそれでいい』

気持ちを込めて、私も司をぎゅっと抱き返した。
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