女王様のため息
「そうだね、まあ、親戚だから一生続く縁だし、私が結婚しても寂しがらないでよ。早く海も恋人作って結婚しなさいよ」
くすくす笑って明るく言うと、途端に落ち込んだ声で、
『おやじと同じ事言うなよ。店に来ても、とっくに真珠の結婚の話はこっちに伝わってるから面倒くさいんだぞ。
次はお前の番だの、早く内孫の顔を見せろだの。
今だって明日店で出すシフォンケーキ焼きながらぶつぶつ言ってるからどうにかして欲しいよ』
本当に困ってるんだろうとわかるくらいに面倒くさそうな海の声。
海よりも先に私が結婚を決めてしまって、親戚中の視線は海に向けられるのかもしれないな。
それにしても、海のお父さんまでもが。
いつも私と海が一緒にいるところに出くわしても何も言わずに笑ってくれているだけだったのに、本心では私と海の結婚を願っていたのかな。
そう思うとちょっと切なくなる。
そして、申し訳ない思いもあるけれど、やっぱり私には司しか考えられないし。
ごめんね。
と心の中で頭を下げた。
もやもやする時にはいつもケーキを作って気をまぎらわしていると、前に聞いた事がある。
今おじさんがケーキを焼いているとすれば、おじさんの心は穏やかなものではないはずだ。
海と私の事、残念だと思っているのかもしれない。
私をかわいがってくれているおじさんだから、きっと。
おじさんの作るシフォンケーキ、すごくおいしいから、そのうち食べに行こうかな。
何を聞かれるかわからないから、その時には司も連れて。
一緒においしいシフォンケーキを食べよう。
と。
そんな事を考えていた時、ふと思いついたのは。
「う、海っ、お願い、おじさんが作るシフォンケーキ、明日の朝貰いに行くから一つ取り置きしておいてって、頼んで。司の実家に持っていきたいんだ」
そんな私の突然思いついた願いは、そのあとおじさんに電話を代わってもらい、事情を話した瞬間に叶えられる事となった。
そして。
明日の司の家への手土産は、決まった。