女王様のため息
その日、司のご両親への挨拶に伺ったというのに、結局は普段口にする事がないおいしいお料理を堪能し、かわいい恵菜ちゃんと戯れて、そして恵さんからは
『司なんかと結婚してくれてありがとう』
と両手を握られながら喜びの言葉をかけられて。
おまけに事前に用意してくれていたらしい真珠のピアスをプレゼントしてくれた。
『司から、名前が真珠だって聞いてたから、安易なセレクトでごめんね。でも、私も気に入って持ってるお揃いのピアスなのよ。
これを受け取ったからには司の返品も受け付けないから、一生司の事を面倒みてね』
司と私の結婚を心から喜んでくれる言葉をかけられて、再び私の涙腺は緩んだ。
司の事が好きで、でも自分のものにはならないと諦めていた長い時間。
絶対にこんな幸せは味わえないと思っていたけれど、司に愛してもらえて、おまけに司の家族にも私の家族にもその事を喜んでもらえて、これほどの嬉しい思いが私に落ちてくるなんて想像もしなかった。
ただ司と寄り添えたらそれでいいと思っていたけれど、それ以上の幸せを与えてもらえたことで、これからの未来に何があっても司とどうにか乗り越えられる自信が生まれた。
「真珠のウェディングドレス姿も見たいけど、白無垢姿も見たいんだよなあ」
ぼそっと呟く司がそれを望むのならば、
「じゃ、どっちも着る」
結婚式まで、準備は大変だろうけれど、それも二人一緒なら楽しめる。
司の実家からの帰り道、車の中でも浮足立つ気持ちは抑えられなくて、頬の筋肉も緩みっぱなしだ。
『つーくんとしーちゃんのけっこんしき、えなもいってもいい?』
そんな恵菜ちゃんの言葉をふと思い出して、
「恵菜ちゃんとお揃いのカクテルドレスを着て、写真も撮りたいな。
きっと恵菜ちゃんかわいいよ」
ふふふっと思わず笑い声も漏れて、二人で夢を描く車内の温度は上昇し続けた。
「で、本当にゴンドラに乗るか?」
司が真面目に聞く声すらも、どこか熱かった。