女王様のため息


司との関係がかなり甘いものに変わってしまって、予想外に早い結婚へのカウントダウンも始まった。

ここ数年、ずっと司への片思いに苦しんできた私の気持ちを払拭するような時間が流れ始めて、それと共に私の心境にもそれなりに変化が生まれた。

特に会社では、これまでずっと一人で抱え込んできた多くの仕事を周囲に振り分けるようになった。

立場上、上司からも先輩女子社員からも仕事を振られて、後輩社員達の仕事のフォローもしなくてはいけない毎日は、知らず知らずのうちに私の心も体も頑なにしていた。

上司に逆らうよりは仕事を引き受けて素早くこなし、後輩に回したい仕事も自分で進めた方が早く終わる。

自分で自分を仕事漬けにするようなこんなやり方を続けていた私の感覚は、麻痺していたのかもしれない。

私に頼れば仕事はどうにかなると周囲が感じている事に気づいていても、普段の忙しさを言い訳に、そこから生じるマイナス部分から目を逸らしていた。

その結果を直視した時、これまでの自分の仕事のやり方には改善するべき所があり過ぎると認めるようになった。

7月の組織変更で、私が総務部から研修部へ異動する事になった事も大きなきっかけだけど、司との結婚が決まって、心に余裕が生じた事が一番の理由かなと思う。

司との関係に悩んで、つらい時間を過ごすよりは、仕事に没頭してそこから目を逸らしたいと無意識の感情が私を動かしていたのかもしれない。

とにかく仕事に集中して、逃げようと、そう考えて過ごしていたと、今ならわかる。

けれど、株主総会という年に一度の大仕事を間近に控えた時期だという事も手伝って、慣れないながらも後輩たちに仕事を渡しつつある。

研修部へ私が異動した後もつつがなく業務を遂行できるようにと考えての引き継ぎにも似た時間は、充実していた。


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