女王様のため息
「ふふっ。かなり素敵な司が写ってる、私のとっておきの写真だもんね。
千円じゃ安いって気分が悪いなら、三千円にでも値段上げようか?」
ふざけたように呟くと、
「……ばーか」
ぎらりと睨まれた。
二人でひっそりと交わす会話の深い部分には、きっと同じ思いが溢れているとわかる。
あの写真を撮った日の事は一生忘れられないはず。
甘くて切ない感情から逃げられないと気づいた初めてのキスをした日だから。
長い間抱えて苦しんできた互いへの愛情を隠せないと、そして身動きできないほどに高まった思いを行動に移したあの日。
司の車の中で交わしたキスを、絶対に忘れない。
そう、あの写真を撮ったあとに初めてお互いの本音を触れ合わせたあの瞬間から私たちの未来は動き出したんだ。
その夜の二人の感情を呼び起こすに違いないあの写真。
写真の事を話しながらも二人が心に浮かべているのは初めて交わしたキスの事に違いなくて妙にこっぱずかしくなるけれど、それもまた幸せで。
「ちゃんと私のスマホに保護をかけて保存してあるよ。
あの写真を他の誰かに見せるわけないでしょ。……たとえ三千円でもね」
司の腕に私の手を置いて、普段の私らしくない可愛い声で囁いた。
それが司を喜ばせる事だとも気づかずに、そっと体を寄せて。
相変わらずうるさい周囲の喧騒を無視した私達は、それこそはた迷惑な恋人同士で、そして今この瞬間、世界一幸せな二人だと感じていた。