桜空あかねの裏事情

少年は笑みを保ったままで、ジョエルは威圧的な態度を崩すことなく、互いに平行線のまま話は続いていく。


「何でもないと言うわりには、随分と深刻そうな顔をしていたようだが?」

「ホントだよ?ホントに何でもないんだよ。サングラスのお兄ちゃんってば変なの」


一向に答えようとしない少年に、ジョエルは更に口元に笑みを浮かべる。
だが彼の横顔を覗くと、その瞳は鋭さを持っている。
それを見た瞬間、あかねは少年を哀れに思った。


「話は変わるが……君はどこかで見たことあるような顔だな」

「そうかな?ぼくはお兄ちゃんに、はじめて会った気がするけど」

「そうかも知れないな。だが君のような子が沢山いる場所を知っている。例えば……“市場”とかな」

「!」


途端に少年の顔色が動揺と恐れに変わる。


「あ、えっ…と……ぼ、ぼくお使いの途中だったんだ!じゃあねお姉ちゃん!」

「あ……」


顔を青ざめ引きつった表情で、ジョエルの後ろにいるあかねに声を掛けると、少年は逃げるように走り去っていく。
その様子を見てジョエルはただ嘲笑う。


「フン。あの程度で逃げ出すとは、まだまだだな」

「子供相手に何言ってんの」


あかねは非難の色を視線に交えながら、呆れるように言う。


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