桜空あかねの裏事情

某所


和を基調としたとある一室。
本来なら静寂を与えるであろうこの場所で、少年は己自身を抱きかかえるように震えていた。


「一人でいたのに捕らえ損ねただと!ふざけるな!」

「ご、ごめんなさい。でもぼくの能力が効かなくて!」


部屋の中心で鞭を片手に怒鳴る男の前で、傷だらけの少年は怯え、ただ平謝りするだけであった。


「なんだと!?使えると思って、わざわざお前を市場から買ってきたというのに!!」

「ひっ!」


男が鞭を持つ手を高く上げるのを見て、叩かれた痛みを思い出し、身を縮こませる少年。


「どうされましたか?」


男が鞭で叩きつけようとしたその時。
女性の猫撫で声がその場に響く。
すると男は振り返り先程の怒りをなど、まるで始めから無かったかのように満面の歪な笑顔を浮かべる。


「ああ黒貂。どうしたんだい?」


黒貂と呼ばれた女性は艶のある笑みをしながら、口を開いた。


「先刻、私の部屋に伺うと仰ってから随分経ちますので、何かあったのかと」

「ああごめんね。今ちょっとやる事があってね。君は部屋に戻っていいよ」

「そうですか……」


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