桜空あかねの裏事情

瀬々がそう言うと朔姫は顔を逸らし、そのままプリントを持って行ってしまう。


「ありゃ嫌われてる?」

「いや、あれはただの……」


照れ隠しと言おうと思ったが、瀬々に言う義理などないと途中で言葉を切る。


「まぁいいや。それより桜空さん」

「なに?」

「あれから二週間近く立ってるのに、何で店に来ないんスかー」


あかねの肩を軽く叩きながら瀬々は尋ねる。


「別にいいじゃん」

「もしかしてお金の事気にしてる?大丈夫っスよ。俺がこの前渡した名刺を見せれば、お得意様ってことで、かなり安くなるんスから」


そういう問題ではない。と内心思いながら、なかなか口を割らないあかねに対し、瀬々は笑みを浮かべながら目を細める。


「それとも……ジョエルさんやアーネストさんに行くなとか言われてたりするとか?」

「別に。つか何で二人を知ってるの?」


挑発的とも取れる物言いに、怪訝な表情を浮かべるあかね。
だが瀬々は飄々とした態度を崩さず、言葉を続ける。


「そりゃ二人は有名人なんで。ジョエルさんは五指の一人で、アーネストさんは面識はないけど、俺の先輩みたいなもんスから」

「へぇ……」

「ああ言い忘れてたけど、君も結構な有名人スよ?」


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