桜空あかねの裏事情
「話は変わるけれど、毎回君にこき使われてる結祈が哀れに思うよ。その内、家出とかしてしまうんじゃないかな」
アーネストがそう言えば、ジョエルは嘲笑するように鼻で笑った。
「それは無いな。あれは一見、好きなように動いて見えるが、自分の意志が極めて希薄だ」
「確かに今はそうかも知れない。でもあかね嬢がいるから、これから先どうなるか分からないものだよ」
「ほう。お前はお嬢さんにそれだけ期待しているという事か」
「そうなるね。そういう君だって、あかね嬢に期待してるから、あんな無理難題を押し付けたのだろう」
異能者のいの字も知らない少女に、チームの今後を委ねるなど常人が考えるような事ではない。
最も、ジョエルは異能者でおまけに思考も既に常人ではないが。
いくらでも他の選択を思い付いていたはずだ。
それなのに敢えて彼女を選んだとするなら、その理由は一体なんだろうか。
アーネストは黎明館に来て彼女と出会ってから、頭の片隅で常に思っていた事なのだが、未だ答えは出ていない。
ただ幾つか分かったことがあり、それは彼女が彼に似ていること。
そしてジョエルの彼女を見る瞳が、かつて彼に向けていた瞳と酷似していること。
アーネストの記憶に残る彼の姿と彼女は確かに似ている。
前向きな性格や言動の端々、時には仕草でさえも。
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