桜空あかねの裏事情

そして何より、あの印象的な青い瞳はとてもよく似ている。彼のそれと同じと思うほどに。
もしかしたら彼の生まれ変わりではないかと言う考えが過るが、それは些か都合の良すぎる考え過ぎた思考。
断ち切るように、アーネストはそこで一旦考えるのをやめる。


「どうかしたのか?」


思考を巡らせていた所為か、無口になっていたらしい。
不意に会話が途切れた事が気になったのかジョエルから、声が掛けられる。


「ああ、大した事ではないよ。ただあかね嬢の事を少し考えてたんだ」

「お嬢さんを……ね」

「可笑しな話だけど、彼女といると妙に落ち着くんだ。まるで……そう、彼といるようで」

「…………」


アーネストがそう答えれば、今度はジョエルが無言になる。
先を歩く彼の表情は見えないが、恐らくあの時と同じ表情をしてるであろうと思えた。


「ジョエル。君もどこかであかね嬢と彼を重ねて見てる節はないかい?」

「……まさか」


間を置きながらも、いつものように否定するジョエル。
だが長年の付き合いから、僅かに動揺が見てとれた。


「結祈が言ってたように、君の行いによってあかね嬢が傷付かなければ、私もそれでいいよ」


聞いてるか聞いてないか。
恐らく前者だろうが、ジョエルはただ無言で前を歩くだけだった。


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