桜空あかねの裏事情
ヴィオレット 個室
雲一つない昼下がり。
昶達が今後の事を話し合っている円卓の間より、少し離れた場所にある個室。
結祈はそこで、館から来たジョエルから報告を受けていた。
「――ということだ。順調に進めば、屋敷の修繕は今日の夜には終わるだろう」
チーム・アロガンテとチーム・アヴィドの共謀により襲撃されて早五日。
彼等の目的はリーデル候補であるあかねの強奪と、十二年前の惨劇の唯一の生き残りである泰牙の抹殺だった。
幸いな事に、こちら側には死者や目立った怪我人はいなかったが、結果として館の一階部分は半壊。
そして泰牙に危害は及ばなかったものの、あかねの強奪を許してしまった。
最小限の被害で済んだとはいえ、頂点不在のまま解散までの日数が無いオルディネとしては、ようやく見つけたリーデル候補を一時的にでも失うことさえ、酷い痛手であった。
そして今日、ようやく館の修繕が終わる報告に一区切りがつくが、安心するにはまだ早い。
「承知しました。では皆さんにもそう伝えておきます。帰還は今日中の方が良いでしょうか?」
「それはお前に……」
「…どうかしましたか?」
不意に黙ってこちらを見下ろすジョエルに、結祈は問い掛ける。
「大した事じゃない。ただ…お嬢さんがまだ戻っていないというのに、妙に清々しい顔が気になってな」
非難にも取れる言動。
恐らくジョエルも、少なからず彼女の事を気にかけてはいるのだろう。
最も彼女をリーデル候補と立てた張本人が、そうでなくては困るのだが。
「そんな事はありません。自分の不甲斐なさとアロガンテの方々に、腸煮えくり返ってますから」
満面な笑みでそう答えれば、ジョエルは眉を顰めてサングラス越しから怪訝な眼差しを向ける。
結祈は笑みを保ちつつ、その突き刺さるよう視線を受け流して、溜め息を零した。
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