桜空あかねの裏事情
「何かご存知なのですか?」
「何も。ただ分かるのは、彼もあかね嬢を助けたいと思っているんだよ。私達と同じでね」
この五日間。
結祈を含めた黎明館に住まう者達は、このヴィオレットに避難していた。
しかしジョエルは初日から館へ戻り、その他協会と接触したりと単独で行動を開始していた。
確かに被害に遭ったのは、館の一階部分のみで二階、三階は変わりはなく生活も出来ない事はなくはない。
だが食堂や浴室は使えないので、一体どのように過ごしているのか、結祈は少しながら気になっていた。
「本当にあの人は一体何を考えているのだか……ああそれと、今夜には館の修繕が終わるとの事です」
「おや、それは良かった。しかしそうなれば、やはりこの辺りであかね嬢を取り戻したいところだね」
「…ええ。そうですね」
朔姫が藍猫の社員、瀬々から得た情報。
それはアロガンテのオーナーが数名の所属者を連れて、明日開催される闇市に出席するというものだった。
謂わば絶好の機会であり、アロガンテの堅牢なる屋敷を攻めるより、あかねを奪還出来る確率が高かった。
とはいえ、彼女が闇市へ連れられているかは分からないし、確証すらない。
しかし僅かでも可能性があるなら賭けてみようと、結祈達は闇市に乗り込み、どさくさに紛れ、あかねを奪還する計画を企てたのだ。
「闇市へは、ジョエルに付き添って一度行ったことがありますが……正直に申し上げて、良い気分ではありません」
「そうだね。私は密輸品や情報目当てに行くけど、行きたくない場所もあるからね」
闇市とはプラティア第五区にて、定期的に行われる非公式の市場である。
密輸品や極秘情報など、公では入手することが困難な代物が数多く出品されており、それを目当てに集まる者が多い。
しかしその片隅で、同朋である異能者を売買するなど道徳に反した事も行っており、この闇市を快く思わない者も少なからずいる。
.