桜空あかねの裏事情

「…あかね様の姿があったとしても、容易に安心は出来ません」

「ああ……確かに気は抜けないね」


険しい表情の結祈に対し、アーネストは更に言葉を続ける。


「でも思い詰めるのは良くないかな」


柔らかい笑みを浮かべて、やんわりと指摘すれば、結祈は僅かに目を瞬かせる。


「結祈は人一倍、心配性だから、あかね嬢の事を気遣うのも分かる。けれど今肝心なのは、彼女を助け出すという強い意志だ」


アロガンテの連中が、あかねに目を付けていた事を、結祈は前々から知っていた。
何故ならジョエルから再三、あかねを守る事を言われていたからだ。
故に相手の動向を日頃から常に伺い、時にはギネヴィアと結託して、密かに警戒を踏まえた上で監視していた。
しかし結果として、その任務とも言えなくもない使命を守れなかった事に責任を感じており、それをアーネストには見抜かれていたのだ。


「色々と考えすぎて、いざとなった時に動けなくなる時もあるからね。何か不安や悩み事があるなら、私達を少し頼ってみてはくれないかな」

「…ありがとうございます。そう言って頂けると助かります」

「うん。きっとジョエルも君が素直で優しいから、色々頼み過ぎてしまうんだよ」


いたずらな笑みを浮かべるアーネストに、結祈は苦笑する。


「それにあかね嬢は愛らしい外見とは裏腹に、とても強かな子だからね。そこまで心配する事もないかも知れない」

「ふふ…言われてみれば、そうかも知れません」


笑みを零してふと辺りを見回すと、陸人と泰牙がいない事に気付く。


「そう言えば、陸人さんと泰牙さんの姿がありませんが」

「ああ、陸人ならコンビニに行ってるよ。新発売された新味があるとか」

「はぁ…そうですか」

「泰牙の方は……うん。そうだね」

「?」

「実に際どいところ……と言うべきかな」

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