桜空あかねの裏事情
ヴィオレット 裏口付近
――こんなに長く、留まるんじゃなかった。
そう思って、もう何度目だろうか。
「俺って本当、馬鹿だよ……」
泰牙は一人、そう悲しげに呟いた。
――怪我が治ったら、すぐに去るはずだったのに。
分かっていたじゃないか。
俺を庇った人達の末路を。
嫌というほど、知ってきたじゃないか。
だからこそ、同じ過去を繰り返さないように、他人と関わる事をあんなにも避けていたじゃないか。
いつもそうだ。
少しでも他人と関わると、その温かさに触れてしまって求めてしまって、気が付くと留まってしまう。
その甘さが、彼等を葬ってしまうのに。
「あかねちゃん……」
怪我が治っても、居座ってしまったのは、きっと彼女の存在だ。
周りに何を言われようが、こんな俺と懸命に向き合い、あまりにも純粋に懐いてくるその姿に、もう少し。
もう少し傍にいたいと思ってしまった。
だがそれがいけなかった。
彼女は俺の抹殺を目的に館がアヴィドに襲撃されたと同時に、アロガンテとかいう別のチームに襲撃されたらしい。
そして連れ去られ、現在行方不明である。
アーネストや結祈は俺に気にする事はないと、元々狙われていたなどと言い、昶もまた励ましてくれたが、相手は互いの目的の為に結託したのではと思う。
詳しい事は知らないし、教えてもくれなかったが、そう考えても不自然ではない。
仮にそうでなかったとしても、俺がいなかったら防げたんじゃないだろうか。
他人に否定されても今尚、そう思う。
館の襲撃に関しては、まさにその通りだ。
今回は幸いな事に怪我人もなく、凌ぐことが出来たけど、もしまた襲撃されたらどうなるかは分からない。
それにオルディネの面々も迷惑だろう。
突然やってきた俺の為に、命の危険に晒されるなんて。
まさに疫病神だ。
これ以上、奴らの手に掛からない為にも早くここから去らないと。
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