桜空あかねの裏事情

「“泰牙さんは用心深くて少し心配性な優しい人”」

「?」

「あかねちゃんがキミの事そう言ってたんだよー。すっごく楽しそうに」


ウザいほどにね。と付け足す陸人だが、正確かつ好意的な印象を聞いて、泰牙は内心嬉しく感じた。


「でもねー、ボクの解釈としては“猜疑にまみれた臆病で優柔不断なヤツ”なんだよね」

「…へぇ」


こちらもこちらで、正確で非難的な印象。
全く嬉しくはないが。
しかし相槌を打つだけで、泰牙は特に反論はしない。


「だからそれぞれの解釈を合わせてキミの行動を考えるとー、責任感じちゃってー、これ以上ボク達に被害が及ばないようにするかなぁって思ったんだけどー……どう?」

「………」

「何も言わないってことは、肯定って事になるけどー?」


挑発的な言動と笑みで追求する陸人に、泰牙は軽く肩を落としてを曖昧な笑みを貼り付ける。


「うーん。キミの様子を見てると、俺がわざわざ言わなくてもいいと思うんだけど」

「そりゃあね。でもそういうのは、本人から聞いて確信を得るものじゃん?」

「ああ……そっか。キミって、たち悪いね」


大して言葉を交わしてない相手に、自分の行動を予想されるほど、自分はそんなにも分かりやすい人間なのだろうか。
それとも陸人が、アーネストや彼女のように察しが良いだけなのか。
どちらにしろ、相手にするには少し厄介なのは明白だ。


「何て言えばいいんだか…まぁとりあえず、俺から言わせてもらえば、元の生活に戻るだけだよ」

「へー…常に命を危険に晒して、見えない殺意に怯えて過ごす生活に戻るんだ?」

「……そうだね」


平穏とは程遠い、波乱に満ちた日常。
追われては逃げ、逃げては追われる。

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