桜空あかねの裏事情
いつかは抜け出したいと思いながらも、今ではもう慣れてしまった日常だ。
「他人を信じきれない俺は、そう生きた方がいいんだよ」
「あっそう。アンタってそんなヤツなんだ」
泰牙の諦観な姿勢に、陸人は苦虫を噛んだように、呆れよりも嫌悪を示す。
「はぁ…やっぱアーネストに止められても、兄さん達にアンタのこと報告すれば良かったなー」
溜め息と共に吐き捨てられた言葉に、泰牙は耳を傾ける。
報告とはどういう事だろうか。
陸人は菊地家の子息だ。
だが自身は菊地家と何ら接点を持った事はない。
「ええと、それって…俺は君の生家にも狙われてるって事?」
「極端に言えばそうだねー……でもそれはボクん家だけじゃない。御三家とそれに従う四家も、ね」
素直に聞けば、陸人は思いの外あっさりと答えてくれた。
だが菊地家だけでなく、他御三家にもそういう対象としてみられているという事実も知らされる。
――他の御三家もって事は、もしかしてあかねちゃんも。
陸人が多少なりとも自分と接していたのは、実家の思惑を含んでだろう。
なら好意的に向き合ってくれた彼女もまた、そうなのだろうか。
「あー言っとくけど、あかねちゃんは違うよ」
顔にでていたのか、はたまた不意に黙った泰牙の様子を察したのか、陸人は付け足すように言葉を続けた。
「あの子はねー、ここに来るまで異能者のことも異能の使い方も、更には実家のことすら知らなかった箱入り娘だからー」
「ええ!?そうなの?あ、でも確かに言われてみれば…」
あかねと話していた時、異能社会の事に割と疎かったのを思い出す。
きっと今まで大切に育てられてきたんだろう。
――けど一般社会の事には、やけに詳しかったよね。
誰よりも話していたのに、泰牙は彼女についてあまりよく知らない気がした。
「だから本当に困るんだよねー。その箱入り娘がリーデルになるなんてさ」
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