桜空あかねの裏事情

遠くから聞こえ続けたその言葉に、泰牙は足を止める。


「このままじゃオルディネは解散。評価するなら、役立たずの小娘って感じかなぁ。まぁ始めから、箱入り娘に出来る事はたかが知れてるって感じ――」

「ちょっと」

「ん?あぁ……まだいたの?」


言葉を遮って振り返れば、今気付いたとばかりに、わざとらしい態度をとる陸人の姿が目に映る。


「あかねちゃんの事をそんな風に言わないでくれ。あの子は何も悪くない」

「は?悪くないとか、そういう問題じゃないし」


先程より低い声色で泰牙が咎めれば、陸人は吐き捨てるように言葉を返す。


「つーかアンタにそんな事言われる義理なくない?ボクは何一つ間違ったこと言ってないんだから」


反省する気はないと、開き直るかのように反論して陸人は更に言葉を続ける。


「それともはっきり言わないと分かんない?アンタがボク達の為と思って去るのは、結局は自分の為に逃げてるだけってこと」

「そんな事――」


ないはずだ。
そう思うのに、どうしてだろうか。
言葉が続かない。


「ほら、間違ってないじゃん。結局アンタはそういうヤツなんだよ。だからアンタを選んだあかねちゃんも、結局その程度なんだよ」


罵るような的確な追求に、何を言われても仕方がないと泰牙は思う。
それだけの自覚はあるのだ。
だがあかねを貶す事に対しては納得はいかず静かに、されど確かに沸々と怒りが湧き上がる。


「俺の事をどう言われても、否定しないよ。事実だろうし、君の言ってる事も間違ってないしさ。けどね、あかねちゃんの事を悪く言うのは許さない」


自分に言える資格はないと痛いほど分かっている。
だがそれでも、泰牙は言わずにはいられなかった。


「あの子は君が思うような子じゃない。君だって本当は分かってるよね?」


「んなワケないじゃん。あの子はボクの目的を遂行するには、邪魔で仕方ないんだから。候補であることだって最悪だけど、ジョエルが決めた事だから従ってるだけ」


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