桜空あかねの裏事情

そう言って苦笑するアーネストに、泰牙も同じく苦笑を返す。


「…なるほどねー。じゃあ俺も結祈くん達と同じように、あかねちゃんを探せばいいんだね」

「察しが良くて助かるよ」

「ちなみにその間、君はどうするの?」

「私も彼女を探すつもりだよ。或いは能力を使って、サポートに徹するかな」

「サポート?」

「そう。収集や解析は容易いけど、広範囲での人探しは初めてだからね。期待に添えられれば、いいのだけれど」

「収集、解析……って事は、君の異能って――」


察しがついたのか、何かを言いかけようとすると、アーネストはただ笑みを浮かべる。
しかしその笑みは何故か、気圧されているような感覚が伴い、泰牙はそれ以上言うことは出来なかった。


「ところで……君はこの後どうするんだい?」


彼の様子を心底愉しそうに眺めていたアーネストが、不意にそう問い掛ける。


「うーん……どうしようかな。とりあえず何が何でも生きるって事は、念頭に入ってるつもりだけど…」


曖昧な答えに、アーネストは泰牙の様子を伺う。
顔を上げて、ようやく見えるようになった彼の表情は、何とも言えないようで、どこか迷っているようにも見える。


「正直なとこ具体的には決まってないや」

「そうかい」

「だけどね」

「何だい?」

「………チームには、多分入らない」


間を置きながらも、はっきりと泰牙はそう告げる。
望む答えではないという申し訳なさからか、気まずさからか。
彼は視線を逸らしたまま、言葉を続けた。



「別に騙されたからじゃない。あかねちゃんは可愛くて優しい子だから、俺は好きだよ」


汚れきった自分とは、比べ物にならないほど強く眩しく輝いている。
疎ましいと思いつつも魅入って惹かれてしまう存在だと、泰牙は密かに思う。


「だからこそ、チーム・オルディネには入らない。あかねちゃんを助けたら、元の生活に……―」


――戻る。
そう心の内では言えるのに、何故か言葉にする事が出来ず、泰牙はそのまま口を閉ざす。


「……君が決めた事なら、私は止めはしないよ」


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