桜空あかねの裏事情

「久しぶりだね、あかね嬢。和装もよく似合っ…おっと」


再会を喜ぶアーネストの言葉も聞かず、あかねは彼に思い切り抱き付いた。


「あかね嬢?」

「会いたかったですっ…」

「!……」


突然の事に不思議に思いながらも、あかねから零れた一言で、彼女が抱えてた不安をアーネストは理解する。
そして縋りつくように自身を抱き締めているあかねに再度、目を向ける。
見た限りでは、外傷は見当たらないが攫われた挙げ句、この五日間見ず知らずの場所にいて、友人にも会えず、知り合いすらいなかったのだ。
いくら気丈な彼女でも、何も思わないはずがない。
彼女はまだ少女と呼ばれるほど幼いのだから。


「私もだよ、あかね嬢。君にどれほど会いたかったか」


未だ離さないようしっかりと自身に抱き付いている彼女にそう応える。
その姿に罪悪感を覚えるのと同時に愛おしいとも思え、そのぬくもりを壊さぬよう、アーネストはあかねを優しく抱き締める。


「怖い思いをさせて、すまなかったね。もう大丈夫だから」

「っ…はい!」


あかねは頷いて顔を上げる。
目が合って満面の笑みを向けると、アーネストもまた嬉しそうに微笑む。


「ふふ。まさか私が最初に見つける事になるとはね。先に潜入した昶達が、見つけるものだと思っていたよ」

「昶達も来てるんですか?」

「もちろん。ジョエルと朔姫以外はみんな来てるよ。ほら」


アーネストの視線を辿ると、会場の入口付近に昶と駿、そして二人を背にして結祈が誰かと話していた。
相手は後ろ姿で顔は分からないが、知り合いなのだろうか。


「何か話してるみたいですね」

「そうだね。だけどあれは……うん。面白そうだ」


そう呟いたアーネストに首を傾げながら、あかねは再び昶達を見る。
昶と駿は互いに話しながら周囲を見回したり、前で話している結祈の様子を伺ったりしているようだった。


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