桜空あかねの裏事情

闇市 会場


――これはどう打開すべきなのでしょうか。


「ねぇいいでしょ?」

「いえ、困ります」


今の今まで声を掛けられる事が無かったから、慢心していたのか。
発端はこの場所に来てすぐの事だった。
結祈は人混みに押され転びそうになった少女を助けた。
見た限りでは、自分と差ほど変わらない年頃であろう。
しかし何を思ったのか、その少女は結祈の顔を見た途端、チームに入らないかと申し出てきたのだ。
どうやら少女はチーム所属者だったらしく、結祈は助けた事を今更ながらに後悔していた。


「有り難いお話だとは思いますが、丁重にお断りさせて頂きます」

「え、何で?オルディネなんて、名ばかりで解散間際のザコじゃない。どうせいたって意味無いわよ」


散々な物言いに言いたい事は山ほどあるが、事情を知らない他人から見ればそんなものだと、結祈はぐっと気持ちを抑える。


「この会場に彼女がいればいいが…」

「すげー。結祈が逆ナンされてるぜ」

「逆ナン?なんだそれは」

「ナンパの逆バージョン」

「なるほど」

「早くあかねを探して、この事話そ」



――関心してる場合でも呑気な事を言ってる場合じゃないですよ。
――貴方達の耳は節穴ですか。

背後から聞こえる昶と駿の会話に、結祈は内心毒づく。


「あ、もしかして大した異能じゃないとか?」

「いえ」


口を閉ざした結祈が気になったのか、少女は探るように尋ねる。
未だに続くやり取りに、嫌気を差し始めている結祈は、首を横に振りつつ短い言葉を返す。


「いいのよ隠さなくたって!なんなら、ボスにはあたしの付人って紹介するわ」

「いえ…本当に結構です」

「心配しなくて大丈夫よ!あなたのこと気に入っちゃったし!それにあたしって見かけによらず、わりと偉いんだから」


意気揚々と話し続ける少女は、結祈の心情を察することも理解することもしようとしないのだろう。
見事に脈絡が噛み合ってない。


「付人でもいいって美少年すげー。美形って職に困んないもん?あ、でも駿センパイは困ってたような」


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