桜空あかねの裏事情
「体質が致命的だったからな」
「なーる」
「今更だが、結祈は付人でも違和感がないな」
「あ、確かに。いつも家事ばっかやってるもんな」
「……二人共、いい加減黙って下さい」
堪り兼ねたのか、結祈はそう言葉を口にして振り返る。
その表情は確かに笑みを浮かべているのだが、何故か昶達に圧力を感じさせた。
「確かに一日の半分は家事に追われてますが、チームの仕事もきちんとこなしています。」
「わ、分かってるって。今のは冗談っていうか……ですよねセンパイ!」
「…事実じゃないか?」
「ギャー!ここで天然かますのやめてマジで!」
駿の発言に、昶は悲鳴にも似た声を上げる。
そんな様子を横目に結祈は軽く溜め息を零すと、再び少女に向き直る。
「とにかくお断り致します」
「そんな事言うけど、断る理由なんてないじゃない!あたし納得できないよー!」
そう言って大層不満げに少女は訴える。
諦める気は毛頭ないと言わんばかりのその姿勢に、結祈は内心ほとほと困り果てて視線を逸らすと、不意に見知った人物が近付いてくるのが目に入った。
「こんなところでどうしたんだい。痴話喧嘩なんて君らしくない」
愉しげな笑みを浮かべて、話し掛けてくるアーネスト。
「…すみませんが、今は冗談に乗れるような気分ではないです」
恐らく自分と少女のやり取りを視ていたのだろう。
アーネストの表情を見て、そう直感した結祈。
それと同時に彼に対して僅かな苛立ちを覚え矛先を向ける。
「もしかして…」
その一方で、少女はアーネストを見てそう呟く。
その表情は目を丸くして、驚きを隠せないようであった。
その様子にチーム所属者なら、情報屋として名高いアーネストを知っていても可笑しくはないと、結祈は密かに思う。
「初めまして。お美しいお嬢さん。良ければ名前を、教えては頂けないかな」
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