桜空あかねの裏事情
石そのものが矢一の片鱗と言えるので、当然と言えば当然なのだが、そう思わずにはいられなかった。
あかねは少し笑みを零すと、矢一を見上げた。
「だからもう少しだけ、わがままに付き合って」
笑顔でそう言えば、矢一は溜め息を吐いた。
「…オルディネの面々は、さぞ苦労しているだろうな」
「む!そんな事ないし。で、返事は?」
「諾」
「やった!」
「ただし、目的を遂行したら必ず帰る。約束だ」
「うん!」
「あかね様…!」
呼ぶ声に振り向けば、すぐ後ろに黒貂の姿があった。
穏やかな笑みを浮かべてはいるものの、どこか落ち着きがなく、あかねは首を傾げる。
「どうしたの?」
「いえ、その……大したことではないのですが」
「?」
「そう言えば、どなたかとお話しされてましたね。もしかして」
「あ、うーんと……実はちょっと違うんだ。でも知り合いだよ」
「では」
その言葉にただ頷けば、黒貂は安堵したように息を零した。
「……良かった。これであかね様の御身は保証されましたわ」
「保証って…そんな大げさな」
「いいえ。例え私達の身がどうなったとしても、貴女様が無事にオルディネの皆様の元へ戻られる。それだけが私の願いなのです」
黒貂が迷いなくそう告げると、あかねは困ったような笑みを浮かべる。
「ありがとう。でも私は、二人にも無事でいて欲しいよ」
「……あかね様」
「だからね、黒貂。一つ聞きたい事があるの」
「聞きたい事、ですか?」
「うん。例えばだけど、籠の中に鳥がいたとするでしょ。でもある日、鍵が外れている事を知る……その鳥はどうすると思う?」
あかねの脈絡のない問いに、黒貂は不思議に思いながらも、思考を巡らす。
そして間もない内に、口を開いた。
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