桜空あかねの裏事情

ふと青年は、矢一の背後に目を止める。
彼の背後には、こちらの様子を窺うあかねの姿があり、凝視していた。


「アイツ、どっかで見たような…?」

「シャシンノコダヨ〜♪」

「写真?…ああ。あの時の」

「ソウソウ!カワイーヨネ♪」

「ガキじゃね?」

「エー!?ヒドーイ!」


青年の発言に少女は文句を言うが、まるで意に介してないようで、青年は何も言わず前へと出る。


「ソイツがオルディネから攫ったガキなら、一番後ろにいる女が、オーナーの女ってことか」


そう言って、青年は奥にいる黒貂へと視線を移す。


「へー……絶世の美女なんつっても、噂に尾ひれがついたぐれーにしか思ってなかったが、なかなかイイ女じゃん」

「エー!?アノコノガ、カワイーヨ!」

「チビ、お前は黙れ」

「…貴様等が何故ここに」


警戒を含んだ面持ちで、静かに矢一が問う。


「何故って、テメェが一番分かってんじゃね?」

「……則義様か」


矢一が則義の名を口にすると、青年は口端を釣り上げて挑発的に笑った。


「ハッ!やっぱ分かってんじゃねぇか!ソイツに言われたんだよ。大事な女が、最近自分よりも付人に入れ込んでて、何しでかすか分からねぇから見張っとけってな」

「………」

「まぁオレ達からすれば?んなの、知ったこっちゃねぇんだけど、こっちも仕事だからな。悪く思うなよ」

「オモウナヨー♪チョーホーノオネエチャンイワク、アノコヲニガソウトシテルラシイケド♪」

「は?あのガキを?だったら別に良くね?」

「エー!?ダメダヨー!ニガスンナラ、アタシガホシーヨ!」


徐々に言い争いを始める少女と青年。
二人を余所に、矢一は深い溜め息を零す。


「則義様はこういう時ばかり、鼻が利く」

「矢一…」

「君は我々に構わず、やるべき事に専念しろ。時間は稼ぐ」

「……うん」


あかねは再び昶達の姿を、脳裏に思い浮かべた。


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