桜空あかねの裏事情
プラティア 第五区
「あーーー」
「後輩ちゃん。さっきから、うるさいんだけど?」
「遅い……あかねが遅い」
「全く聞いてないんだけど?ねぇ?これ殴っていい?殴っていい?」
「落ち着いて下さい」
額に青筋を立て拳を作る陸人を、結祈が宥める。
だがその声色は冷めていて、どこか単調でもあった。
「だってさー、どう考えても遅くね?」
「確かに。気になる事があるとは言っていたが……何かあったのか?」
「どうかしらねぇ?もしかしたら、まだその気になる事が終わってないのかも」
昶や駿、そしてギネヴィアが口々にそう述べる。
彼等はあかねと再会を果たしたアーネストの指示に従い、闇市を後にし、少し離れた荒廃した場所で、待機していた。
それから時が経過したが、あかねは一向に姿を見せなかった。
「…………」
アーネストは昶達の会話を聞きながら、あかねから渡された石を見る。
薄緑色の波模様が入った透明な石。
話を聞く限りテレポート、即ち瞬間移動の異能が込められているのは分かっていた。
――彼女の身に何かあったのか?
――けれど、もしそうなればあの石が発動するはず。
――何も反応がない事を見ると、ひとまず安心するべきか。
――だが……やはり否応なしに、彼女を連れてくるべきだったのだろうか。
――……いや、それでは駄目だ。
――心苦しいが、彼女には多少なりとも、危険な目に遭ってもらわねばならない。
――何故なら……。
「アーネストさん」
「何だい?」
不意に声を掛ける結祈に、微笑みかけるアーネスト。
「いえ。ただ先程から無言で石を見つめているので、気になって。何か考え事でも?」
「…ああ、うん。少しね」
「……あかね様の事ですか?」
間を置いて、やんわりと問い掛ける結祈。
ジョエルとは違い、まず相手を気遣うのは、彼の長所だと思いながら、アーネストは頷く。
「そうだね……半分は」
「え?」
「アーネストさん!」
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