桜空あかねの裏事情

昶に呼ばれ、アーネストは顔を上げる。


「どうしたんだい?」

「ちょっと見て欲しいんだけど」


手招く昶に、重い腰をあげてアーネストは傍に寄る。


「何か、ちょいちょい出てくんだけど」


昶の指差す方へ目を向けると、闇市の出口から少しずつ、まばらに人が出て行く姿があった。
足早に去っていく様子と、微かに聞こえる喧噪からして、穏やかではないと判断する。


「……」

「えーもう闇市終わったのー?早いねー」

「そんな事ないと思いますけど。それより皆さん、どこか慌てた様子なのが気になります」


先にある光景に、関心なしと言わんばかりの陸人の気の抜けた様子と、結祈の状況を理解しようと努める様子を横目に、アーネストは密かに意識を集中させる。



――“探索開始”


内で呟くと、アーネストの頭には一瞬にして現在の闇市の様子が、次々と浮かび上がる。
状況がうまく呑み込めていない者、全く気付かずに談笑を交わす者、出口へと一目散に逃げる者など様々な姿があった。


――客を見るに
――大した騒ぎではないのかな。
――もう少し探るか。


更に探って行くと、ある一つの光景が浮かび上がる。

――ここは……。
――確か会場から外れた通路。
――だが何かおかしい。


意識を研ぎ澄ませ、視野を広げて見渡せば、アーネストはある光景を目の当たりにする。


――!……そういうことか。


「やれやれ……確かに予想はしていたけれど」


垣間見えた光景に、半ば呆れたように苦笑する。


「どうやら連中は、思いのほか破天荒過ぎるようだ」


一人で納得したように呟けば、手にしていた石が淡い緑色の光を放ち輝き出す。


「石が…!」

「……分かっているよ」


アーネストの言葉に呼応するように、石は一際眩い光を放つ。
その眩しさに目を細めれば、目の前に影らしきものが現れる。
光が消え、視界がはっきりすると、目の前に現れたのが人である事が分かった。
だがそれは――。


「え!?」

「あれー?」

「…どういう事だ?」

「……やはりそう来るよね」


周囲が驚きの声を挙げる中、アーネストは唐突に現れた人物を見て、細く微笑んだ。

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